温厚で賢い家庭犬として不動の人気を誇るゴールデンレトリバーですが、その愛らしい姿の裏にある、見過ごせない欠点について深く考えたことはありますか。
多くの人が抱く「飼いやすい」というイメージだけで安易に迎えてしまうと、大型犬ならではの大変さや、想像を絶する抜け毛の量に直面し、後悔してしまうケースも少なくありません。
プードルのような毛が抜けない犬種とは異なり、ゴールデンレトリバーとの生活では日々の丁寧なケアが不可欠です。
また、飼育には広々とした一軒家や庭が必須なのではないか、迎えるための初期費用は一体いくらぐらいかかるのか、といった具体的な金銭面や環境面の不安を抱えている方も多いでしょう。
この記事では、ゴールデンレトリバーとの暮らしで「こんなはずではなかった」と後悔しないために、飼う前に必ず知っておくべき現実的な欠点と、それらに対する具体的な対策について、詳しく掘り下げて解説していきます。
- ゴールデンレトリバーの性格と飼育の難易度
- 抜け毛や運動量など日々のお世話の実態
- 飼育に必要となる環境やスペース
- 迎える際にかかる初期費用から生涯コストまで
ゴールデンレトリバーの欠点を知って後悔を防ぐ
- ゴールデンレトリバーは本当に飼いやすい?
- ゴールデンレトリバーの飼育が大変な理由
- 大型犬ゴールデンレトリバーならではの注意点
- ゴールデンレトリバーの抜け毛は想像以上
- ゴールデンレトリバーは毛が抜けない犬種?
ゴールデンレトリバーは本当に飼いやすい?
ゴールデンレトリバーは、一般的に「賢い」「温厚」「人懐っこい」という三拍子が揃った、理想的な家庭犬として広く知られています。
そのイメージ通り、人間に対して非常に友好的で攻撃性が低く、学習能力も高いため、基本的なしつけは比較的スムーズに入りやすい犬種です。
特に小さな子供やお年寄りがいる家庭においても、その穏やかな性格は大きな安心材料となるでしょう。
しかし、この「飼いやすい」という言葉を額面通りに受け取ってしまうのは早計です。
彼らの賢さは諸刃の剣であり、良いことを覚えるのが早い一方で、飼い主が望まない行動やクセも驚くほど早く学習してしまいます。
例えば、子犬の頃に適切な社会化トレーニングや一貫性のあるしつけを怠ると、要求吠えや甘噛み、イタズラといった問題行動が定着しやすくなります。
また、「温厚」という性格もあくまで犬種としての一般的な傾向に過ぎず、全ての個体に当てはまるわけではありません。
人間と同じように、犬にも一頭一頭個性があり、中には繊細で臆病な子や、少し頑固な子もいます。
誰にでもすぐに心を開くわけではなく、真の信頼関係を築くには、飼い主からの深い愛情と、根気強いコミュニケーションが不可欠なのです。
結論として、ゴールデンレトリバーは犬の飼育が初めての方でも迎え入れることは可能ですが、「何もしなくても自動的に賢く育つ」魔法のような犬種ではありません。
飼い主が明確なリーダーシップを発揮し、愛情を持って一貫したルールを教え続ける努力が求められることを、強く認識しておく必要があります。
ゴールデンレトリバーの飼育が大変な理由
ゴールデンレトリバーの飼育における「大変さ」は、主にその有り余るほどのエネルギーと、深い愛情欲求に起因します。
彼らはもともと、撃ち落とした水鳥を回収する「鳥猟犬(ガンドッグ)」として活躍してきた歴史を持ち、その血筋からくる優れた体力と活動意欲を受け継いでいます。
そのため、心身の健康を維持するためには、成犬の場合、1回1時間程度の散歩を1日に2回行うのが理想とされています。
単調に歩くだけでなく、時には公園でボールを投げたり、ドッグランで他の犬と走り回らせたりと、運動に変化をつけて知的好奇心も満たしてあげることが重要です。
この運動量を日常的に確保できないと、有り余ったエネルギーがストレスとなり、家具の破壊や無駄吠えといった問題行動につながる可能性が高まります。
加えて、ゴールデンレトリバーは非常に甘えん坊で、飼い主や家族と触れ合うことを何よりも喜びとする犬種です。
この深い愛情は大きな魅力である一方、孤独に弱いという側面も持っています。
飼い主への依存度が高くなりやすく、長時間の留守番は深刻なストレスとなり、飼い主の姿が見えないと鳴き続けたり、物を壊したりする「分離不安」という状態を引き起こすことも少なくありません。
常に家族の輪の中にいたいと願う犬種であるため、日中ほとんど家に人がいない家庭環境や、犬と密接に関わる時間を十分に確保できないライフスタイルの方にとっては、飼育が大きな負担に感じられる可能性があります。
大型犬ゴールデンレトリバーならではの注意点
ゴールデンレトリバーは大型犬に分類され、その大きな体格に起因する、小型犬や中型犬とは異なる特有の注意点が数多く存在します。
これらを軽視すると、思わぬ事故やトラブルにつながる可能性があるため、事前の理解が不可欠です。
第一に挙げられるのが、その圧倒的な力の強さです。
成犬の体重はオスで約29~34kg、メスで約25~29kgにも達し、その引きの力は想像以上です。
散歩中に猫や鳥など何かに強く興味を引かれて急に走り出した場合、非力な女性や子供、お年寄りではリードを保持しきれず、転倒して怪我をしたり、犬が逃走してしまったりする危険性があります。
これを防ぐためにも、子犬の頃から飼い主の横を意識して歩く「リーダーウォーク」の訓練を徹底し、飼い主が確実にコントロールできるようにしておくことが絶対条件です。
次に経済的な負担の大きさも無視できません。
ドッグフードの消費量は小型犬の数倍に及び、フィラリアやノミ・ダニの予防薬、各種ワクチン、病気や怪我をした際の治療費や薬代も、すべて体重に比例して高額になります。
ペットホテルやトリミングサロンの料金も、大型犬サイズに設定されているのが一般的です。
さらに、シニア期に入った際の介護問題も深刻です。
大型犬は寝たきりになった場合、その体を動かすだけでも大変な労力が必要となります。
自力で起き上がれない子の体位変換や排泄の補助、通院などは、飼い主にとって相当な体力的・精神的負担となることを、迎える段階から覚悟しておく必要があります。
ゴールデンレトリバーの抜け毛は想像以上
ゴールデンレトリバーを家族に迎えた飼い主の多くが、最初に衝撃を受けるのが、その想像を絶する抜け毛の量です。
彼らの美しい被毛は、寒さから体を守るための柔らかく密生した下毛(アンダーコート)と、水や汚れから皮膚を保護する長くて硬い上毛(オーバーコート)の二層構造、いわゆる「ダブルコート」になっています。
この被毛の構造により、1年を通じて常に毛が生え変わりますが、特に気温が変化する春と秋の「換毛期」には、アンダーコートがごっそりと抜け落ちます。
その量は、しばしば「セーターが編めるほど」「もう一匹犬が作れる」と表現されるほど凄まじく、日々の掃除を少しでも怠ると、家の中はあっという間に毛だらけになってしまいます。
【抜け毛対策の必須事項】
- 毎日のブラッシング:スリッカーブラシやコームを使い、死毛をこまめに取り除く。
- 頻繁な掃除:粘着カーペットクリーナーや、吸引力の強い掃除機が必須。空気清浄機の活用も効果的。
- 定期的なシャンプー:月1~2回を目安にシャンプーを行い、抜け毛を洗い流す。
衣類やソファ、カーペットはもちろん、食事の中にまで毛が舞い込むことも日常茶飯事です。
そのため、アレルギー体質の方、掃除にあまり時間をかけられない方、あるいは衛生面を極度に気にする方にとっては、この抜け毛問題が深刻なストレスとなり、飼育の継続が困難になる可能性も十分に考えられます。
ゴールデンレトリバーは毛が抜けない犬種?
この問いに対する答えは、明確に「いいえ」です。
これまでの説明の通り、ゴールデンレトリバーは「犬種の中でも特に毛がよく抜ける犬種」であり、「毛が抜けない」という情報は完全な誤りです。
もしそのような情報を耳にしたことがあるとすれば、それは他の犬種との混同か、あるいは全くのデマ情報でしょう。
一般的に「毛が抜けない」「抜け毛が少ない」とされる犬種の代表格は、プードル、マルチーズ、シーズー、ヨークシャー・テリアなどです。
これらの犬種は、換毛期がない「シングルコート」の被毛を持っており、毛が抜け落ちる代わりに伸び続けるため、定期的なトリミング(カット)が必須となります。
その代わり、日常的にソファや床に散らばる抜け毛は非常に少ないのが大きな特徴です。
犬アレルギーの原因は、実は毛そのものだけでなく、フケや唾液、尿などに含まれるタンパク質(アレルゲン)であることが多いとされています。
しかし抜け毛が多ければ、それらに付着したアレルゲンも一緒に室内に飛散しやすくなるため、アレルギー症状を悪化させる一因となり得ます。
もしご自身やご家族に犬アレルギーの心配がある場合や、抜け毛の手間をどうしても避けたいという強い希望がある場合は、ゴールデンレトリバーの飼育は慎重に、そして現実的に検討する必要があります。
犬種ごとの特性を正しく理解し、ご自身のライフスタイルや許容範囲に本当に合った犬種を選ぶことが、人間と犬の双方が幸せに暮らすための最も重要な第一歩と言えるでしょう。
ゴールデンレトリバーの欠点と必要な飼育環境
- ゴールデンレトリバーの飼育に一軒家は必須か
- ゴールデンレトリバーに庭は必要?
- ゴールデンレトリバーを迎える初期費用とは
- 医療費や食費など生涯かかる費用
- ゴールデンレトリバーの欠点の理解を深めよう
ゴールデンレトリバーの飼育に一軒家は必須か
「ゴールデンレトリバーのような大型犬を飼うには、広々とした一軒家でなければ無理だ」というイメージは根強くありますが、これは必ずしも絶対的な条件ではありません。
結論から言えば、必要な条件と配慮さえ怠らなければ、マンションやアパートといった集合住宅でも飼育することは十分に可能です。
ただし、クリアすべきハードルがいくつか存在します。
最も重要なのは、お住まいの物件の管理規約を徹底的に確認することです。
「ペット可」となっている物件でも、その多くには「小型犬のみ」や「体高〇cm、体重〇kgまで」といった細かな規定が設けられています。
まずは管理組合や不動産会社に問い合わせ、「大型犬の飼育が明確に許可されているか」を必ず確認してください。
その上で、物理的なスペースの確保も課題となります。
成犬になったゴールデンレトリバーがゆったりと体を伸ばして眠れる大型のケージやクレート、ベッドを置いても、なお生活動線が確保できる広さが必要です。
また大型犬の歩く音や尻尾を振る音は意外と大きく響くため、床に防音性の高いマットやカーペットを敷くなど、階下や隣室への騒音対策は必須のマナーと言えるでしょう。
エレベーターや廊下といった共用部では必ずリードを短く持ち、他の住民とすれ違う際は立ち止まってやり過ごすなど、周囲への最大限の配慮が求められます。
これらの努力を惜しまなければ集合住宅での共生も可能ですが、やはり周囲に気兼ねなく過ごせる一軒家の方が、犬と飼い主双方にとって精神的なストレスが少ない理想的な環境であることは間違いありません。
ゴールデンレトリバーに庭は必要?
自宅に庭があることは、ゴールデンレトリバーにとって非常に嬉しい環境であることは事実ですが、これもまた「必須条件」ではありません。
庭の有無よりも遥かに重要なのは、飼い主が責任を持って、毎日欠かさず十分な量の散歩や運動をさせてあげることです。
「庭があるから散歩は適当でいい」という考えは、大きな間違いです。
散歩は単なる排泄や運動の機会であるだけでなく、外の空気や匂いに触れ、他の人や犬と出会うことで社会性を養うための重要な時間です。
庭だけで過ごさせていると、運動不足はもちろん、社会性の欠如から臆病になったり、他の犬に対して攻撃的になったりする可能性があります。
庭の役割は、あくまで日々の散歩を補完する「プラスアルファの空間」と捉えるべきです。
短い時間の気分転換や、雨の日の簡単なトイレ、安全な環境で飼い主とボール遊びを楽しむなど、補助的な活用法はたくさんあります。
庭がない家庭でも、毎日の散歩時間をしっかりと確保し、週末には少し足を延ばして大きな公園やドッグランに連れて行くなど、運動の機会を意識的に作ってあげれば、何ら問題なく健康的な生活を送ることができます。
庭で遊ばせる際には、脱走防止のための高さと強度のあるフェンスの設置や、誤飲の危険があるものを置かない、夏場の熱中症対策といった安全管理も徹底する必要があります。
ゴールデンレトリバーを迎える初期費用とは
ゴールデンレトリバーを新しい家族として迎えるにあたり、まとまった初期費用が必要となります。
最大の割合を占めるのは子犬の生体価格ですが、それ以外にも生活を始めるために必要な様々なグッズや手続きに関わる費用が発生します。
生体価格は犬の血統(親がチャンピオン犬であるかなど)、月齢、性別、毛色、そして購入先(ブリーダー、ペットショップ、保護犬団体など)によって大きく変動しますが、おおむね30万円から60万円程度が現在の相場観と言えるでしょう。
これに加えて、以下の費用が必要となります。
| 項目 | 内容 | 費用目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 生体価格 | 子犬本体の価格 | 300,000円 ~ 600,000円 | 購入先や血統により大きく変動 |
| 飼育グッズ代 | ケージ、トイレ、食器、ベッド、首輪、リード、ブラシ、おもちゃ等 | 50,000円 ~ 80,000円 | 成犬サイズを見越した大きさの物を選ぶ |
| 畜犬登録料 | お住まいの市区町村への犬の登録費用(生涯1回) | 約3,000円 | 法律で定められた義務 |
| 狂犬病予防接種 | 法律で義務付けられた年1回の予防接種と注射済票の交付料 | 約3,500円 | 厚生労働省の定めによる義務 |
| 混合ワクチン接種 | 致死的な感染症を防ぐためのワクチン(子犬期に2~3回接種) | 15,000円 ~ 25,000円 | 接種回数は迎える月齢による |
| 合計 | 約371,500円 ~ 711,500円 | ペット保険の初月保険料などが加わる場合もある |
これらの項目を合計すると、最低でも40万円近く、場合によっては70万円を超える初期投資が必要になると見込んでおくのが現実的です。
安易な気持ちで迎えるのではなく、計画的に資金を準備することが求められます。
医療費や食費など生涯かかる費用
ゴールデンレトリバーとの暮らしで本当に重要なのは、初期費用よりもむしろ、その後10年以上にわたって継続的に発生する「生涯コスト」です。
特に大型犬は日々の食費から医療費に至るまで、あらゆる面で小型犬よりも費用がかさむことを覚悟しなければなりません。
年間にかかる費用の内訳と目安
以下に、ゴールデンレトリバー(成犬)と暮らす上で年間にかかる主な費用の目安をまとめました。
- フード・おやつ代:120,000円~200,000円(月1~1.5万円)
- 医療費(予防関連):40,000円~60,000円(フィラリア・ノミダニ予防薬、狂犬病・混合ワクチン)
- ペット保険料:40,000円~70,000円(プランや年齢による)
- 消耗品代:20,000円~40,000円(トイレシーツ、シャンプー、歯磨きグッズなど)
- その他:30,000円~(トリミングサロン、ペットホテル、ドッグラン利用料など)
これらを単純に合計するだけでも、病気や怪我がない健康な年でも、年間で25万円から40万円程度の出費が見込まれます。
ゴールデンレトリバーの平均寿命は約10年~12年ですので、生涯に換算すると、単純計算で250万円~500万円以上の費用がかかる可能性があるのです。
さらに懸念すべきなのが、ゴールデンレトリバーが遺伝的にかかりやすいとされる病気の存在です。
大手ペット保険会社アニコム損害保険株式会社の「家庭どうぶつ白書2023」によると、ゴールデン・レトリーバーは他犬種に比べて皮膚疾患や腫瘍(特に悪性リンパ腫や血管肉腫)の請求割合が高い傾向にあります。
また、大型犬に多い股関節形成不全や胃捻転なども、発症すれば高額な外科手術が必要となるケースが少なくありません。
こうした万が一の大きな出費に備えるため、経済的な余裕を持つことはもちろん、ペット保険への加入を積極的に検討したり、犬専用の貯蓄口座を用意したりといったリスク管理が極めて重要になります。




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