「サモエドの子犬を見てはいけない」という言葉を、聞いたことはありますか?
あの雪のような白い毛並みと、口角が上がった「サモエドスマイル」を一度でも目にしてしまうと、気づいたときには「どこで買えますか?」と問い合わせていた——そんな人が後を絶たない犬種です。
この記事では、サモエドの性格とリアルな飼育事情を、できる限り正直にお伝えします。
サモエドは確かにかわいい。それは本当のことです。
でも、かわいさだけを見て迎えてしまうと、後になって「こんなはずじゃなかった」と感じる場面が必ず出てきます。
飼うのが大変だと言われる理由、日本の夏との相性の悪さ、分離不安の強さ、そして「性格が悪い」と言われる理由の真相まで、飼育を検討しているあなたが知っておくべきことを丁寧に解説していきます。
飼ってから後悔したくない方に、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。
この記事を読むとわかること
- サモエドの性格の全体像と「性格が悪い」と言われる本当の理由
- かわいいだけじゃない、飼育で直面する5つのリアルな現実
- 日本の高温多湿な環境がサモエドにとって危険な理由
- サモエドに向いている人・向いていない人の具体的な特徴
サモエドの性格、一言で言うと?飼う前に知っておきたい気質の話
サモエドの性格を語るとき、「明るくて人懐っこい」という説明はよく見かけます。
でも実際に飼い始めた人たちの声を聞くと、それだけでは到底説明しきれない、独特の気質があることがわかってきます。
ここでは、サモエドという犬種の性格の本質を、飼育に直結する形でお伝えします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原産国 | ロシア(シベリア・ツンドラ地帯) |
| グループ | スピッツ系・使役犬グループ |
| 体高(オス) | 54〜60cm(理想:57cm前後) |
| 体高(メス) | 50〜56cm(理想:53cm前後) |
| 体重(オス) | 25〜32kg |
| 体重(メス) | 18〜25kg |
| 平均寿命 | 12〜14年 |
| 被毛タイプ | ダブルコート(長毛・高密度) |
| 飼育難易度 | 高(初心者には非推奨) |
※体高・体重はジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準に基づく目安です。
フレンドリーで陽気…でも、そのフレンドリーさ自体が悩みになる
サモエドは、人間への愛情が非常に深い犬種です。
これはただの性格の話ではなく、数千年にわたる「人との共生の歴史」に裏付けられた本能に近いものがあります。
もともとサモエドは、シベリアの遊牧民・サモエド族(現在のネネツ族)と極限環境で共に生きてきた犬です。
昼間はソリを引き、トナカイの牧畜をこなし、夜になると人間のテントの中で寄り添って眠る。そういう役割を担ってきた犬種でした。
つまり、「人間と密着して生きること」が彼らのDNAに深く刻まれているのです。
愛情深さが、悩みに変わる瞬間
この愛情深さは、飼い始めのうちは「なんてかわいいんだ」と感動するはずです。
でも、時間が経つとその深さに少し疲れてくる飼い主さんも少なくありません。
たとえばこんな場面です。仕事から帰ってきたら、玄関で大歓迎される。
最初のうちはうれしいのですが、これが毎日、何十分にもわたって続く「おしゃべり(後述します)」とセットになると、少し話が変わってきます。
また、ソファでくつろごうとしても、常に隣に寄ってくる。
家族全員の行動を把握しようとする。
トイレにまでついてくる——これらはすべて「大好きだから」という理由で行われる行動ですが、プライベートな空間や時間を大切にしたい人にとっては、じわじわとしたストレスになることもあります。
サモエドの「フレンドリーさ」とは、適度な距離感を保つ能力が低いということと表裏一体です。
それを「かわいい」と受け取れるか、「ちょっとしんどい」と感じるかは、飼い主のライフスタイルに大きく左右されます。
サモエドの性格が「悪い」って言われるのは本当?正直に答えます
「サモエド 性格 悪い」という検索をしている方が一定数いることは、データが示しています。
この疑問、正直に答えます。
結論からいうと、サモエドの性格は悪くありません。
人間やほかの動物に対して攻撃的になることは稀で、基本的に温厚で愛情深い犬種です。
ただし、「扱いやすい犬か?」と聞かれると、話は変わります。
「頑固さ」と「自立心」が生む誤解
サモエドは北方犬種特有の独立心と頑固さを持っています。
命令に従うことよりも、自分で判断することを優先する場面が多く、しつけに時間がかかると感じる飼い主さんが少なくありません。
「呼んでも来ない」「おすわりを教えたのに気分次第でやらない」——こうした経験から、「この子は性格が悪いのかも」と感じてしまうわけです。
でもこれは、性格が悪いのではなく、犬種として持つ気質の問題です。
サモエドは「従うために生きている犬」ではなく、「共に考えながら動く犬」だと理解するのが正確です。
なお、しつけの難しさや知能の高さについては、別の記事で詳しく解説しています。
サモエドを飼って気づく、かわいいだけじゃない5つの現実
性格の良さや見た目のかわいさは本物です。
でも、実際に迎えてから「こんなことは想像していなかった」と感じる瞬間が、サモエドには特に多い。
ここでは、飼育経験者の声と生物学的な根拠をもとに、5つのリアルをお伝えします。
このセクションの内容
現実① 誰にでも懐く=番犬には1ミリもなれない
サモエドを家族に迎えたとき、「大型犬だから防犯にもなるな」と思う方がいます。
残念ながら、この期待は完全に裏切られます。
サモエドは、知らない人間に対して「警戒心」より「好奇心と歓迎」の反応を示すように、長い歴史をかけて選ばれてきた犬種です。
シベリアの広大な平原では、知らない人間に遭遇すること自体が稀なイベントであり、出会えば「協力すべき仲間」と判断するのが合理的でした。
この遺伝的な背景から、サモエドは訪問者全員を尻尾を振って迎えます。
配達員も、工事業者も、そして泥棒も。
サモエドに番犬の役割を期待することは、生物学的に無理な話なのです。
「吠えない」がむしろ問題になるケース
見知らぬ人が来ても吠えないため、不審者の侵入を知らせる役割も果たせません。
「大型犬がいる家」という視覚的な抑止効果はあるかもしれませんが、それ以上の防犯機能は期待しないのが賢明です。
番犬が必要な環境をお考えの方は、サモエドではなくセキュリティシステムの導入を検討したほうがよいでしょう。
現実② 独特の「語りかける声」が、近所トラブルの火種になることも
サモエドは「おしゃべりな犬」として知られています。
ただし、その「おしゃべり」は一般的な犬の吠え声とは少し異なります。
「Woo-woo」と呼ばれる独特の発声
サモエドは「ウーウー」「アウアウ」という、遠吠えと唸りの中間のような複雑な発声をします。
英語では”Woo-woo”と表現されるこの声は、飼い主への愛情表現、甘え、要求、不満など、様々な感情を伝えるために使われます。
これは北方犬種がもともと群れの中で長距離通信手段として「遠吠え」を多用してきた歴史に由来しており、声帯のコントロール能力が高く、豊かな発声が可能な構造を持っています。
かわいい声ではあるのですが、問題は頻度と時間帯です。
要求が通るまで鳴き続ける根気強さ
サモエドは知能が高いため、「こう鳴けばおやつが出る」「こう鳴けば散歩に連れて行ってもらえる」という学習を素早く行います。
そして一度学習したパターンは、要求が通るまで何時間でも繰り返す根気強さ(頑固さ)を発揮します。
飼い主が反応すればするほど強化されるため、最初の対応が非常に重要です。
誤った対応を続けると、集合住宅では近隣トラブルに発展するリスクがあります。
マンションや壁の薄い住宅での飼育を検討している方は、この点を特に慎重に考える必要があります。
現実③ 人が大好きすぎて、お留守番がとことん苦手
「分離不安」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
飼い主が不在のときに強い不安や恐怖を感じ、問題行動を起こしてしまう状態のことです。
サモエドは、この分離不安を発症しやすい犬種として知られています。
「孤独=死」という本能が残っている
ソリを引くときはチームで動き、牧畜をするときはハンドラーと連携し、眠るときは人間と触れ合う。
サモエドにとって「孤独」とは、自然界における「死」と同義の体験でした。
この本能が現代の飼育環境でも色濃く残っているため、長時間のひとりぼっちは強烈なストレス要因になります。
| 分離不安の主な症状 | 具体的な行動例 |
|---|---|
| 破壊行動 | ドアや壁紙をかじる、ソファの中身を出す、フローリングを掘り返す |
| 不適切な排泄 | しつけ済みでも留守中に粗相をする |
| 自傷行為 | 前足を舐め続けて皮膚を傷つける |
| 長時間の鳴き続け | 隣近所に聞こえるレベルの遠吠え・要求吠え |
日中フルタイムで働いていて、毎日8時間以上サモエドをひとりにしてしまうような生活スタイルの場合、分離不安の問題は避けて通れない可能性が高いです。
「かわいいから飼いたい」という気持ちはよくわかりますが、在宅時間の確保や、ペットシッター・デイケアの活用など、具体的な対策をセットで考えることが不可欠です。
現実④ 北方犬の宿命…日本の夏は、本気でキツい
サモエドの身体は、マイナス60度の極寒環境で生き抜くために設計されています。
その身体で、高温多湿な日本の夏を乗り越えるのは、想像以上に大変なことです。
ダブルコートが「熱を閉じ込める牢獄」になる
サモエドの被毛は、外側のオーバーコート(長く硬い直毛)と、内側の高密度なアンダーコート(綿毛のような短毛)の二重構造です。
このアンダーコートが空気を大量に含み、強力な断熱層を形成することで、極寒から体を守っています。
ところが、この同じ機能が夏には逆に作用します。体内の熱を外に逃がさず、閉じ込めてしまうのです。
さらに日本特有の高湿度は、パンティング(口を開けて呼吸すること)による体温調節の効率を著しく低下させます。
| 気温 | リスクレベル | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 20〜22℃ | ⚠️ 警戒 | 湿度60%超の場合は運動を控えめに |
| 23〜25℃ | 🟠 厳重警戒 | 日中の散歩は避ける。室内でもエアコン必須 |
| 25℃以上 | 🔴 危険 | エアコンなしの留守番は命に関わる |
| 30℃以上 | 💀 極めて危険 | 短時間の屋外移動でも熱中症リスクあり |
環境省の熱中症予防情報によると、気温と湿度の組み合わせ(WBGT値)が高い日は、人間よりも早く動物が危険な状態に陥ります。(参照:環境省 熱中症予防情報サイト)
「5秒ルール」と夏の散歩の絶対ルール
気温30℃の晴天時、アスファルトの表面温度は50〜60℃に達することがあります。
散歩に出る前に、飼い主が手の甲をアスファルトに5秒押し当て、熱いと感じたら散歩は中止する。
これが「5秒ルール」です。
夏場の散歩は早朝(4:30〜6:00)または深夜(21:00以降)に限定し、5月〜10月はエアコンを24時間稼働させることが実質的な必須条件になります。
この電気代は月1万5千円〜3万円程度の「生存維持費」として最初から予算に組み込む必要があります。
現実⑤ 30kgの存在感が、日常生活をガラッと変える
成犬になったサモエド(オス)の体重は25〜32kgです。
数字だけ見ると「まあ大きいな」くらいに感じるかもしれませんが、実際に生活をともにしてみると、その影響は想像をはるかに超えます。
散歩・住環境・衛生管理への影響
まず散歩について。サモエドはもともとソリを引いて走り続けるために生まれた犬です。
1日2回、各1時間(計2時間)、距離にして5〜10kmの運動が目安とされています。
これを毎日続けるには、飼い主自身にも相応の体力と時間が必要です。
住環境についても注意が必要です。
多くのペット可マンションでは「体重10kg以下」などの制限があり、サモエドが許容される物件は非常に限られます。
仮にOKな物件でも、体重25kg超の犬が走る音は階下への重低音として響きます。
衛生管理の手間も覚悟が必要です。
雨の日の散歩後は、泥だらけになった腹部と足を洗い、ドライヤーで乾かすのに1時間以上かかることも珍しくありません。
換毛期は「白い悪魔」がやってくる
春と秋の年2回やってくる換毛期は、飼い主の間で「白い悪魔」「部屋に雪が降る」と表現されます。
1回のブラッシングで、スーパーのレジ袋数杯分の毛が抜けることは日常茶飯事。
室内飼育の場合、空気中に舞った毛が食事、衣服、家電のフィルターに入り込みます。
換毛期は毎日のブラッシングが不可欠です。
怠ると抜け毛が絡まってフェルト状の毛玉(マッティング)を作り、皮膚の通気性を塞いで「急性湿疹(ホットスポット)」の原因になります。
抜け毛対策の詳細については別記事にまとめています。
→ サモエドの抜け毛がひどすぎる理由と、換毛期を乗り切る5つの対策
サモエドはあなたに向いている犬?飼う前の最終チェック
ここまで読んで、「それでも飼いたい!」と思っている方へ。
最後に、サモエドとの生活がうまくいく人・うまくいかない人の特徴を正直にお伝えします。
これが、この記事で一番重要なセクションかもしれません。
このセクションの内容
| チェック項目 | 向いている✅ | 厳しいかも⚠️ |
|---|---|---|
| 在宅時間 | 在宅ワーク・家族が常時いる | 毎日8時間以上の留守番が必要 |
| 住環境 | 庭付き一戸建て・郊外 | 集合住宅・ペット制限あり物件 |
| 運動習慣 | 毎日2時間歩ける体力と時間がある | 運動が苦手・多忙でまとまった時間が取れない |
| 気候 | 東北・北海道など比較的涼しい地域 | 沖縄・本州の都市部(夏の管理コストが高い) |
| お金の余裕 | 年間50〜100万円の固定費を確保できる | 飼育費用の詳細をまだ調べていない |
| 静かな生活 | 多少の声や賑やかさが好き・気にならない | 静かな環境を強く望む・騒音に敏感 |
こんな人・環境なら、きっとうまくいく
サモエドとの生活がうまくいく人には、いくつかの共通点があります。
まず、在宅時間が長いこと。
在宅ワーカー、専業主婦・主夫、あるいは家族の誰かが常にいる環境なら、サモエドの分離不安リスクを大幅に減らすことができます。
次に、アクティブなライフスタイルを持っていること。
毎朝早起きして犬と一緒に走ることが苦にならない、アウトドアや犬とのスポーツに興味があるという方にとって、サモエドは最高のパートナーになります。
子どもがいる家庭にも向いています。
サモエドは忍耐強く、子どもの予測不能な行動に対して攻撃的になることが稀です。
遊び好きな性格が子どもと非常によくマッチし、成長を共にする良い経験になるでしょう。
ただし、体重25kg超の犬が走り回ることで、幼児を物理的に突き飛ばしてしまうリスクはあるため、小さなお子さんがいる場合は目を離さないことが基本です。
庭付きの一戸建てに住んでいて、毎日の運動・グルーミング・温度管理に投資できる環境が整っている方であれば、サモエドは他の犬種では得られない深い絆と喜びをもたらしてくれます。
正直、サモエドを飼うのが難しい人の特徴
逆に、サモエドとの生活が難しくなりやすいパターンも、明確に存在します。
これを知ることの方が、実は大切かもしれません。
犬を初めて飼う方には特に慎重になってほしい
獣医師や経験豊富なブリーダーの多くが「サモエドは初心者に推奨しにくい犬種」と口をそろえます。
理由は性格の悪さではありません。
「環境管理の難しさ」「被毛管理の膨大な手間」「運動要求量の多さ」「精神的ケアの必要性」——この4つのハードルを同時にクリアし続けることが、経験のない飼い主には相当な負担になるからです。
また、日中長時間の留守番が避けられない一人暮らしの方や、集合住宅にお住まいで騒音・体重制限がある方も、飼育環境の整備に相当な工夫が必要になります。
費用面の現実も正直に
サモエドの子犬の価格相場は、現在40〜60万円程度が一般的です(血統・ブリーダーによっては100万円を超えることも)。
さらに月々のランニングコストは、フード代・トリミング代・医療費・夏の光熱費などを合わせると、5万〜10万円程度が現実的な試算です。
年間では50〜100万円規模になることを覚悟してください。
加えて、サモエドにはVKH様症候群(ブドウ膜皮膚症候群)という、目と皮膚に影響する自己免疫疾患や、股関節形成不全、糖尿病など、遺伝的に注意が必要な疾患があります。
早期発見・早期治療が命綱になるため、定期的な健康診断と、万が一に備えたペット保険の加入は実質的に必須と考えてください。(参照:ジャパンケネルクラブ サモエド犬種標準)
「かわいい」という気持ちは本物でも、「飼える環境かどうか」の判断は別物です。
サモエドは「生きているぬいぐるみ」ではなく、高度な知性と野生に近い身体機能を持った使役犬です。
その事実と向き合えた人だけが、本当の意味でサモエドに選ばれる資格があると思います。


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